Media & Music Writer Review

永堀アツオ / 音楽ライター

真実の愛を探求するあなたにはAcid Black Cerryの音楽を勧めたい。
彼のニューアルバム『L—エル—』の中心には、「真実の愛ってどこにあるんだろう?」「変わらない愛ってなんだろう?」という問いかけがある。
 
楽曲の視点は、大きく分けて3つ。1つ目の“私“は、ただまっすぐに“愛“を求めるひとりの女性エル。2つ目はエルを一途に思い続ける絵描きの“僕“。そして、3つめが“僕たち“となっている。“僕“の視点で歌われるM1、M4、M5、M7の4曲には“愛“というワードは登場しない。彼は純粋に“君の笑顔“を見ることだけを夢見ている。一方、“私“視点のM2、M3、M6、M10、M11では、エルが辿る悲惨な運命が語られる。愛することを真摯に信じているだけなのに、やがて壊れ、傷付きあい、ただれ落ちていく……。幾多の傷と悲しみを背負った彼女だが、M13とM14でようやく“僕たち“の幸せな時間が訪れる。しかし、直前のM12を聞くと、悪魔がエルに見せた夢なのではないか?という想像もできるため、救いようがなく、痛いぐらい圧倒的な切なさの塊として胸の中に居座り続ける。再会させてあげたかったという気持ちのまま、また1曲目に戻る。
 
より緻密さの増したサウンドプロダクションの中で展開される、壮大なラブストーリー。フィクションではあるけれども、決して甘くてロマンティックな夢物語にはなってなく、エンタテインメントの基本と言われるセックスとバイオレンスも描かれてる。なぜ愛情が憎しみを生み出すのか? 近年のJ-POPではあまり歌われていないテーマだけれども、日々の鬱屈したエネルギーや極限の真実を描くのであれば、性と暴力は無視できない要素であるのは間違いない。
また、蛇足ではあるが、yasuのヴォーカル力にも触れておきたい。シンプルに歌の巧さに驚嘆した。トータルコンセプトやテーマとは関係なく、1曲1曲のたまやかな歌心、歌の技術の高さだけで人を感動させられるシンガーだと思う。