Media & Music Writer Review

中川智美 / 和歌山放送 アナウンサー

CDを再生して、ブックレットを手に取る。曲と合わせて読み進めていくと、いつの間にかエルと同化していることに気付く。愛とは何なのか?信じては裏切られ答えを探しさまようエルとは対照的に、故郷で待ち続けるオヴェスの揺るぎない想いがあたたかい。特に好きなのは13曲目の「Loves」。通い合う心が歌詞と重なり、激動のエルの人生がまざまざと思い返されては凪いでいく気持ちになる。最後にエルが見た景色はどんなものだったのだろうか、と世界観に浸れる心地よさ。言葉選びもサウンドも細部までシンクロする。
私事だが先日、珍しい甘口の赤ワインをいただいた。純粋な赤果実の甘さだけが広がる。まさしく、無垢な幼少のエルと重なった。
しかしエルは運命に翻弄され愛を求め続ける。家族、親友、そして恋人と交わりながら自身を変化させていく。決して単純でない、苦悩と情熱が絡み合う複雑味は、一滴残らずあなたが味わって、確かめてほしい。