Media & Music Writer Review

斉藤ユカ / 音楽ライター

その饒舌な音世界の大きな起伏に、何度も繰り返し訪れる揺らぎに、聴き手はもれなく
翻弄される。物語の主人公“エル”の人生の波乱に寄り添うコンセプトアルバムとしての側面で見るならば、『L-エル-』はまさに壮大な組曲のような作品だ。ただ、着目すべきはやはりその音楽的進化。Acid Black Cherryが生まれ持った幅と奥行きは、今作でより深みと色合いを増した。  
真骨頂である重厚なサウンドワークとポップなメロディを軸に、ヘヴィな音の中にかつて歌謡曲が有したきらびやかさを落とし込んだり、実験的なストリングスアレンジに挑んだりと、ファンの耳が喜ぶ展開が次から次へと訪れる。さらには、歌詞の行間のふくよかさが聴き手の想像力を掻き立て、おのずと物語の向こう側へといざなう。ああ、そうか、視覚的なんだ。と、アルバムの中盤に至ってようやく気がついた。まるで映像を見るように、耳から入り込んだ音楽が頭のどこかで視覚化されていくのだ。だからこそ、光が見える。殺伐とした世界の中に描かれた、ほんの一筋の、だけど徹底的に純粋で美しい光が見える。この作品の中に作り手であるyasuのリアルなメッセージが刻み込まれているとしたら、
それはきっと、この一筋の輝きが意味するものだろう。  
緻密に構築されたサウンド、豊かなメロディ、そして情感あふれる歌声。
いずれにしろ秀逸。聴くほどに、その深淵な魅力を増していく1枚だ。