Media & Music Writer Review

佐久間裕子 / 音楽ライター

アルバムの真ん中を貫くひとつのテーマ。そして綿密に固められたコンセプト。世界観から楽曲に至るまで、細部まで丁寧に作り込まれた作品が力作にならないわけがない。Acid Black Cherryの新作は、そんな当たり前のことを再認識させてくれるアルバムだ。
 既発のヒットシングル4曲が、新録曲の中にすんなりととけ込んでいるのもお見事。それもコンセプトがきちんと練り込まれている証だろう。どの楽曲も聞いているだけで、Lという女性を主人公に据えた映像が浮かんでくるようだ。アルバムを聴きながら思ったのは、Lという女性がどうなっていくのか。そして彼女に恋する少年の恋心はいつか叶うことができるのかということ。1曲聴き終えるごとに、起承転結がきちんとある映画のように、先の展開が気になってしょうがなかった。
 波乱の人生を生きたLという女性の人生を、バラエティーに富んだ14の楽曲に乗せて歌うyasuの情感豊かな唄声もさすが。目の前から消えてしまった初恋の少女を思い続ける少年。男たちに翻弄されながら夜の街に身を落としていく少女。胸の中にずっといる少女への溢れんばかりの恋心。疾走感のあるナンバーではみずみずしい少年らしさを湛え、喧噪と虚飾にまみれた夜の街を思わせる曲では、妖艶なのに、どこか憂いを感じさせる女性になりきる。yasuというボーカリストとしてのスキルとテクニックを、思う存分、味わうことができる1枚にもなっていると思う。